IT導入補助金の申請・手続きについてわかりやすく解説

IT導入補助金は、中小企業、小規模事業者、個人事業主のDX推進を後押しする補助金制度です。
ITツールを導入して業務の効率化や、インボイス対応を検討している経営者の方々に、補助金制度の内容と、申請から交付までの流れをわかりやすく解説します。

IT導入補助金を活用して、あなたのビジネスを効率化してみませんか?

1.IT導入補助金とは?

IT導入補助金は、中小企業、小規模事業者、個人事業主がITツールを導入する際にかかる費用の一部を国が補助してくれる制度です。

この補助金は、自社の課題解決にあったITツールやシステムを導入し、業務のデジタル化、業務の効率化、生産性の向上を図ることを支援します。

また、インボイス制度に対応した会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト、PC・タブレット、レジ・券売機等の導入をサポートするとともに、インボイスに対応した企業間デジタル取引の促進を後押しします。

最新のソフトウェアやシステムを導入し、デジタル技術を活用して、業務の自動化、効率化、コスト削減、生産性の向上を目指す中小企業、小規模事業者にとっては、ぜひ活用していただきたい補助金になります。

2.補助金の対象者は?

この補助金は、中小企業、小規模事業者、個人事業主が申請の対象となります。

主な申請要件としては、日本国内で事業を営む法人または個人であること、事業場内の最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること、gBizIDプライムを取得していること、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」又は「★★二つ星」いずれかの宣言を行うことなどが挙げられています。

また、業種別に中小企業、小規模事業者が定義されていますので、詳細は公募要領で確認する必要があります。

3.IT導入補助金の支援内容とは?

それでは、補助金の具体的な支援内容を見ていきましょう。

IT導入補助金にはいくつかの類型が設けられており、補助率、補助金もそれぞれの類型ごとに設定されています。

2024年度の主な類型として、「通常枠」、「インボイス枠(インボイス対応類型)」をまとめると以下のようになります。

類型内容補助率補助金
通常枠課題やニーズにあったITツールを導入する経費の一部を補助するもの1/2以内1プロセス以上:5万円以上150万円未満
4プロセス以上:150万円以上450万円以下
インボイス枠(インボイス対応類型)インボイスに対応した会計・受発注・決済ソフト、PC・ハードウェアなどを導入する経費の一部を補助するもの3/4以内、4/5以内50万円以下
2/3以内50万円超〜350万円以下
PC・タブレット等1/2以内10万円以下
レジ・発券機1/2以内20万円以下

「通常枠」、「インボイス枠(インボイス対応類型)」が申請件数も多く一般的な類型になります。

他には、インボイス制度に対応した受発注システムを受注者に対して無償でアカウントを供与して利用させる場合に、その導入費用の一部を補助する「インボイス枠(電子取引類型)」や、サーバー攻撃に対する潜在リスクの低減を支援する「セキュリティ対策推進枠」、複数の企業が連携してITツールを導入し生産性向上を図る取り組みを支援する「複数社連携IT導入枠」などがあります。

また、ソフトウェアの費用だけでなく、導入コンサルティング費用、導入設定費用、保守サポート費用も、補助金の対象となります。

4.IT導入補助金のしくみとは?

4-1.補助事業者、IT導入支援事業者、事務局の立場

IT導入補助金のしくみを見ていきましょう。
それぞれの立場を整理しますと、以下のようになります。

・補助事業者

中小企業、小規模事業者、個人事業主のことで、生産性向上をめざして、実際にITツールを導入する企業になります。

・IT導入支援事業者

補助事業者と共に事業を実施するパートナーとして、ITツールの導入、説明、サポートを行う立場の企業になります。

また、補助金申請、実績報告など、IT導入補助金事務局への申請手続きのサポートを行う立場の事業者でもあります。

・IT導入補助金事務局

所轄省庁は、経済産業省中小企業庁になります。

4-2.パートナーシップを組んで申請する

IT導入補助金は、補助事業者(中小企業、小規模事業者、個人事業主)とIT導入支援事業者がパートナーとなって申請することが必要となります。

IT導入支援事業者は、事前にIT導入補助金事務局に事業者としての登録が必要で、

登録されていないITベンダーとパートナーシップを組むことはできませんので、ご注意ください。

これにより、補助事業者とIT導入支援事業者は、交付申請はもとより、採択後のITツール導入、事業実施報告、補助金を受給した後の事業効果報告に至るまで、強いパートナーシップを築き、事業に臨む必要があります。

4-3.ITツールは事前に審査が必要

また、補助金申請できるITツールは、IT導入支援事業者がそれぞれ事前に申請し審査で認められたものに限られます。

よって、補助金申請を考えている場合、そのソフトウェア、導入コンサルティング、導入設定、保守サポート、操作教育などが、パートナーとなるIT導入支援事業者によって登録されているか否かを確認しておく必要があります。

5.補助金と助成金のちがいと採択のポイント

5-1.補助金と助成金のちがい

ここでポイントとなるのが、補助金と助成金のちがいになります。

一般的に、助成金は、申請順に受付されて予算がなくなれば終了となりますが、補助金の場合は、申請内容の審査があり、採択されなければ補助金事業を進めることができません。

よって、申請を提出するだけではなく、審査に合格する、採択される申請内容になっているかどうかが重要になります。

5-2.採択のポイント

採択されるには、いくつかポイントがあります。

その中でも、補助事業者として、事業の目的、内容、効果をしっかりと申請内容に伝えられているかどうかが重要なポイントとなります。

そのためのプロセスとして、IT導入支援事業者とともに、自社の課題や改善すべきポイントは何か?、それを解決するためには、どのようなITツールを導入すべきか?、そして導入後どのような効果を出したいのか?といった点をしっかりと話し合いを行い、内容を整理して申請書類に記載することをおすすめします。

6.申請手続きの流れと準備するもの

IT導入補助金の申請・手続きは、以下のステップで進められます。

1.必要書類、事前準備

IT導入補助金を申請するためには、GビズIDの取得が必須になります。

これがないと、補助金の申請ができません。

GビズIDの取得には日数がかりますので、早い目に準備して取得しておきましょう。(GビズIDの申請はこちら

主な必要書類は、法人と個人事業主によって異なります。

法人の場合は、履歴事項全部証明書、法人税納税証明書となります。

個人事業主の場合、運転免許証または運転履歴証明書または住民票、所得税の納税証明書、確定申告書となります。

その他、セキュリティアクション自己宣言、みらデジ経営チェックなどが必要となります。

2.交付申請

必要書類、事前準備が整いましたら、申請手続きを開始します。
手続きは、IT導入補助金のポータルサイトを使用し、すべてペーパーレスで行います。

申請は補助事業者と、ITベンダーであるIT導入支援事業者が、お互いに入力内容を確認し、それぞれ担当する情報を入力します。

3.採択発表

審査が終了し、交付決定日に申請結果が発表されます。
採択されると申請マイページから採択の通知書をダウンロードできます。

4.事業実施

採択通知を受理した後は、計画した内容に基づき、一連の補助事業を実施します。

ここで、ITツールの導入を、パートナーとなったIT導入支援事業者からではなく、他の事業者に変更することはできないので、ご注意ください。

5.実績報告

契約、ITツールの納入、請求、支払が終了し、補助事業の実施が終わりましたら、次に実績報告を行います。

実績報告では、導入したソフトウェアの画面キャプチャ、請求、支払いに関する証憑などを添付して事業実績の報告を行います。

ここでも、補助事業者とIT導入支援事業者がお互いにポータルサイトに入力することになります。

6.補助金請求確定・入金

実績報告を提出し、報告内容の審査が通過し、補助金の請求確定が終わりましたら、補助金の入金を待ちます。

後日、事務局から補助金が指定した口座に振り込まれます。

詳しくは、IT導入補助金のサイトに、交付申請、実績報告に関する手引きが掲載されていますので、そちらを参考にしてください。
また、コールセンターが設けられていますので、ご不明な点をお電話でのお問い合わせることも可能です。

7.IT導入補助金活用事例

7-1.事例1:通常枠

導入企業:宮城県、飲食店

課題と経緯:人手不足の影響で、ランチ営業の継続が困難な状況が続いていました。

導入したITツール:セルフオーダーシステム(客席のタブレットでオーダーした情報が厨房に届くシステム)を導入しました。

導入後の効果:

  1. ランチ営業が5人から4人で運営できるようになり、人員の効率化が図れました。
  2. オーダーの正確性とスピードが向上しました。
  3. スタッフは料理の配膳と接客に専念できるようになりました。
  4. 人員の効率化により利益がアップしました。

将来の展望:

セルフオーダーシステムで蓄積した顧客データ(男女比率やメニューごとのオーダー数など)を分析し、メニュー改善、注文の予測などに活用できればと考えています。

7-2.事例2:インボイス枠

導入企業:東京都内、製造業者

課題と経緯:インボイス制度導入に対応するために、請求書発行システムを刷新する必要がありました。

導入したITツール:インボイス対応の会計・請求書発行システムと、それを運用するために新しいパソコンを導入しました。

導入後の効果:

  1. インボイス制度に完全対応した請求書の発行が可能になりました。
  2. 取引先ごとの請求書データを一元管理できるようになりました。
  3. 消費税の計算や仕入税額控除の管理が自動化され、作業効率が向上し、作業ミスも減少しました。
  4. 会計システムとの連携により、経理業務の効率も大幅に向上しました。

将来の展望:新しいシステムでデジタル化された取引データを活用し、今まであまりできていなかった経営分析を行い、業務の改善を図ります。

これらの事例は、IT導入補助金を活用することで、業務効率化や生産性向上、法令順守などの課題解決に、おおいに役立っており、IT導入補助金は中小企業、小規模事業者、個人事業主にとって、重要な支援策の一つになっていると言えます。

8.事業スケジュール

IT導入補助金は、年度内にいつでも申請できるというわけではなく、事業スケジュールがそれぞれ類型ごとに設けられます。

2024年度であれば、通常枠で7回、インボイス枠で12回の募集回が設定されました。

各募集回ごとに、交付決定日、事業実施期間、事業実績報告期限が定められていますので、スケジュールを確認しながら、事業を進めてください。

9.補助金受給後の効果報告について

交付決定を受け、補助金を受給した補助事業者に対して、事業終了後、生産性向上に係る数値目標に関する情報(売上、原価、従業員数など)、給与支給額、事業場内最低賃金などを

効果期間内に報告することが求められています。

類型によって、報告の回数、効果期間、報告内容が異なります。賃上げ目標が必須要件となっている類型もありますので、事業実施効果報告の手引きが公表されましたら、その内容を確認しておきましょう。

10.2025年度のIT導入補助金はどうなる?

12月6日に発表されました、令和6年度補正予算案(中小企業・小規模事業者等関連予算)によりますと、持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長投資支援策の一環として、2025年度もIT導入補助金は継続実施される見通しです。

(以下、令和6年度補正予算案から引用)

生産性向上支援の拡充(ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金、事業承継・M&A補助金)

【3,400億円(生産性革命推進事業)の内数】

●中小企業・小規模事業者の設備投資、販路開拓、IT導入、事業承継等を支援

●例えば、以下の措置拡充を実施

・最低賃金近傍の事業者に対する支援として、補助率を1/2→2/3に引上げ(ものづくり補助金、IT導入補助金)

・設備投資や取引実態等に合わせ、補助上限・枠・要件見直し(ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金、事業承継・M&A補助金等)などを実施し、より使い勝手のよい、政策効果の高い支援制度に見直し。具体的には以下の見直しを実施

11.まとめ

IT導入補助金は、システム導入にかかる費用を抑えながら、業務効率化やインボイス対応、セキュリティ対策を推進することができるので、中小企業、小規模事業者、個人事業主にとっては絶好の支援策といえます。

2025年度も、IT導入補助金は実施される見通しですので、ITツール、システムの導入をお考えの企業におかれましては、しっかりと事前準備をしていただき、ぜひ、この補助金を活用して、業務の効率化、生産性向上、競争力強化に繋げてください。

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